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妻を笑顔にするための、多忙なビジネスマンの手料理日記

包丁との出会い:牛刀包丁を選んだ理由

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流しの下、キッチンで最も開けやすい引き出しを開くと、備え付けの包丁立てが取り付けられている。プラスチックの箱に、切れ込みが入っただけの簡単な構造なのだが、その切れ込みから包丁の黒い柄(え)が飛び出しており、私はその一つに右手を伸ばして引き抜いた。

 

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心地よいずっしりとした重さが、右手に伝わってくる。この包丁こそ、私が愛用する刃渡り21cmの牛刀である。

 

まず、この柄が素晴らしい。太すぎず、細すぎず、掌(てのひら)の中にすっと収まり、しっとりとした木の手触りが、ずっと握っていたいと思わせる。和包丁の木の柄のように、濡れることを少々気にしてしまうような繊細さも必要ないし、かといってプラスチックの柄のような不自然な軽さもない。右手に収まるその感触は、持つものに謂(いわ)れのない自信や安心感を与える、そんな不思議な感覚がこの包丁から伝わってくる。

 

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そのまま刀身に視線を移す。キッチンの明かりが鈍く反射し光っている。材質はクロム・モリブデン特殊合金鋼で、所謂ステンレス合金の一種、切れ・研ぎ・防錆を備える特殊鋼である。最近流行りのダマスカス包丁のような装飾はない。無骨な金属面には、うっすらと同じ方向に筋が入り、光の反射角度によっては淡く輝いて見える。

 

世界に数多ある包丁のなかから、私はこの『東京・杉本』の牛刀を選んだ。包丁なんてホームセンターやスーパー、あるいは百円均一などでも買える時代である。仮に高級包丁を選ぶとしても、築地・正本、有次(築地・京都)、Misono、ZWILLING、GLOBAL(吉田金属工業-YOSHIKIN)、その他様々な包丁があるわけだが、そのなかから敢えてこの包丁を選んだ理由は、私の祖母と母が愛用する包丁が杉本の包丁だったからだ。

 

社会人になり、自分で毎日料理を作るようになって初めて、実家にいたころは当たり前のように食卓に並べられたご飯が、「当たり前ではない」ことに気づく。作ってもらっていた料理やお弁当に、どれだけの時間と手間がかかっていたのかに気づく。今ではボロボロになってしまった実家の包丁を通じて、長年注いでもらった愛情を感じたとき、自然と私は祖母と母が使ってきたのと同じ、杉本の包丁を手に取っていた。柄から伝わるこの重みには、実際に感じる重み以上の何かがあり、その重みを右手に感じながら、今度は私が「妻を笑顔にするために何を作ろうかな」と、毎日キッチンに立つのである。

 

先日実家に帰ると、母が嬉しそうに杉本の包丁を見せてきた。一部錆びてボロボロになっていた柄が、手作り感溢れる新しい柄に変わっていた。どうしたのか聞くと、父親が日曜大工で直したとのこと。できのよさに父を誉めると「良くできてるだろ」と父もまんざらでもない様子であった。この父も母の手料理が大好きで、どんなに仕事が遅くなろうと、外食などほとんどせずに家で夕御飯を食べるのだが、毎日ご飯を作ってくれる母への感謝を、包丁を通じて感じていたのかもしれない。

 

つづく

 

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